若桜鉄道・隼駅~懐かしい昭和の木造駅舎がある駅はライダーの聖地!?~



スズキGSX1300Rハヤブサ聖地の駅!?

若桜鉄道、隼駅祭りで有名な隼駅、昭和初期築の木造駅舎が残る

 若桜鉄道の隼駅には、先程訪れたばかりの八東駅とほぼ同型の木造駅舎が現役で残っている。1929年(昭和4年)の築で、駅の開業は翌年の1月20日。開業以来の駅舎だ。窓枠がサッシになっているのが少し惜しいが、それでも押縁下見の木の外壁が、木造駅舎本来の味わい深さを感じさせる。2008年に、若桜駅の駅舎や転車台など、若桜鉄道の23の古い施設が登録有形文化財に登録されたが、この隼駅駅舎もその一つだ。

若桜鉄道・隼駅、スズキの「GSX1300R隼(ハヤブサ)」のポスター

 「はやぶさ」と言えば、鉄道ファンの私としては、隼駅訪問の数週間前に廃止されたばかりの最後の九州ブルートレイン「寝台特急はやぶさ」がどうしても思い浮かぶ。失われた愛着ある列車を想うと、寂しさを心を過ぎる。

 しかし、バイク乗りにとって「はやぶさ」とは、スズキの「GSX1300R隼(ハヤブサ)」だ。バイク誌・ミスターバイクが、名前が同じ事で
8月8日はハヤブサの日。隼オーナーは隼駅に集まれ!
と提唱した所、隼駅にツーリングに来る人が増え、いつしか「隼の駅」として聖地とされた。そして、それはメーカーのスズキにも公認されるまでになった。

 2009年のハヤブサの日こと8月8日には、第一回目の隼駅まつりが開催された。200人ものGSX1300Rハヤブサを駆ったライダーが全国から集まり、地元の人々も入り混じり、約500人もの参加者で普段は静かなローカル線の駅はとても賑わったという。

昔のままの造りが味わい深い待合室

若桜鉄道・隼駅の木造駅舎、待合室

 駅舎内の待合室はほぼ原形を留め、使い込まれた木々や漆喰が紡ぐ木造駅舎そのものの空間があった。ハヤブサのポスターが何枚も貼られ、ライダーの記念写真も飾られるなど、古い木造駅舎とハヤブサが独特の駅空間を作り上げている。きっとハヤブサ乗りにとっても心地よい場所になっているに違いない。

若桜鉄道・隼駅の木造駅舎、原形をよく留めた窓口跡

 特に素晴らしいのが、無人駅となっているにも関わらず、昔のままの造りをほぼ留めた窓口跡だ。左側の出札口、右側の一段低い手小荷物用の窓口、そしてそこに残る木のカウンター、木のままの窓枠・・・、使い込まれた木々にしか宿す事ができない美しさを持っている。掲示物が多いのが少々鬱陶しい気がする。しかしそれでも、ただその美しさに心引きつけられずにはいられなかった。

若桜鉄道・隼駅、木造駅舎らしさ溢れる切符売場(出札口)跡

 出札用窓口…いわゆる切符売場の跡だ。素晴らしいまでに昔のままの造りを留めている。ニスも塗られていたりなど、手入れが良くされているのが嬉しい。

若桜鉄道・隼駅の木造駅舎、駅事務室跡

 窓口跡の裏側や旧駅務室内部を外から覗いて見た。こちらも大きな改装の跡は見られない。

 若桜鉄道では無人駅となった木造駅舎の駅務室を店舗として貸し出している。寂れやすい無人駅に人がいるという状況ができ、駅が生きている感じがするのはいいが、入居してると結構改装されてしまい、そのような駅舎では趣は少々落ちてしまい、愛好家的な視点からは残念だ。隼駅は原形をよく留めるがゆえに味わいも一層と深い。誰かに活用されるとしても、末永く今のままの姿を守って欲しいものだ。

鳥取県八頭町、若桜鉄道・隼駅、駅前の道

 駅前を出て歩き、通りに出ると、商店などの店舗がいくつかある他は、住宅が立ち並んでいた。ローカル線の昔からの駅前通りという風情で、のんびりこじんまりとしている。ライダーの来訪が多いためか、「隼駅」と書かれた目立つ看板が、道沿い設置されている。

若桜鉄道・隼駅、木造の古い倉庫

 プラットホーム上、駅舎横には古めかしい小さな小屋が残っている。建物財産標を見ると「詰所1号」となっていて、標された年月は昭和5年1月20日。こちらも駅開業以来のものだ。

若桜鉄道・隼駅、ホームに置かれた人形

 若桜鉄道の無人駅には、幼児位の背丈位の人形がいくつか置かれている駅が多かった。田舎のほのぼのとしたムードを感じさせる人形で、駅の雰囲気を明るくするのに一役買っているのだろう。ただ、幼児位の大きさとは言え、いつも何気に振り向き視界の片隅に入り「いつの間にか人が背後に居るっ!!!」と何度びっくりさせられたことか・・・。

若桜鉄道・隼駅、のどかなプラットホームの風景

 次の列車の時間が近づいてきた。プラットホームに立ち周囲を見渡すと、山々に囲まれたのどかな風景が広がっていた。今は1面1線の棒線駅だが、側線跡らしき空地もあった。

[2009年(平成21年)4月訪問](鳥取県八頭町)

追記1: その後の隼駅

 隼駅まつり、GSX1300R隼をきっかけに、活性化の動きはますます活発になってきた。

 旧駅事務室が売店「把委駆(バイク)」となり、隼駅グッズ、隼駅訪問証明書「聖地巡礼之証」などを販売している。

 「ブルートレインはやぶさの車両を隼駅に!」という活動が始まった。実際にはやぶさで使われていた車両の取得は叶わなかったものの、2011年(平成23年)、JR四国の夜行快速ムーンライトで使われていた12系客車が構内で保存されるようになった。「ムーンライトはやぶさ」と名付けられ、休憩所やライダーハウスなどとして活用されている。

 その前年の2010年には、北陸鉄道で廃車となった1954年(昭和29年)製の電気機関車・ED301が譲渡されていた。現在では側線跡に、ムーンライトはやぶさを牽引しているかのように並べられ、静態保存されている。

 2009年以来、隼駅まつりも毎年開催されて、すっかり地元の有名イベントとして定着した感だ。

追記2: 隼駅まつり訪問

 2015年8月9日に開催された第七回隼駅まつりを訪問する事ができた。過去最高の1200台のバイクが全国から隼駅に集結したという。全国のナンバーを掲げたGSX1300Rハヤブサでごった返す風景は、まさに熱き聖地巡礼。ハヤブサ乗りでもバイク乗りでもない私にも、印象深いお祭りだった。

鳥取県八頭町、隼駅まつりの風景。多くのGSX1300R隼で賑わう
全国から聖地・隼駅に集まったスズキ・GSX1300Rハヤブサでぎっしり
隼駅まつり、GSX1300Rハヤブサと昭和初期築の隼駅舎
隼駅まつり、混み合う午前、記念撮影待ちの列は途切れる事なく続く…
若桜鉄道・隼駅で開催される隼駅まつり、GSX1300R隼と木造駅舎
昭和4年築の木造駅舎を背景にエンジン音を響かせ出発

祭りの後…

若桜鉄道、隼駅まつり後のいつもの隼駅
隼駅まつりの夕方、再び隼駅を訪れると、いつもの日常が戻っていた。まるで昼間の賑わいが幻のよう…
隼駅まつり後、夕暮れの隼駅
あれだけハヤブサが賑わしていたが、いまはたった一台。夕空の下、ライダー達は帰路についている事だろう。

隼駅・基本情報+

鉄道会社・路線
若桜鉄道・若桜線
駅所在地
鳥取県八頭郡八頭町見槻中
駅開業日
1930年(昭和5年)1月20日。※同年12/1の若桜線全通までは終着駅だった。
駅舎竣工年
1929年(昭和4年)※開業以来の駅舎
駅営業形態
簡易委託駅※駅前の商店で乗車券を発売。
隼駅まつり開催日と会場
隼駅まつりは、例年、ハヤブサの日である8月8日前後の日曜日に開催。参加者が大幅に増えているため、約2km南の船岡竹林公園の方がメイン会場となり、各種イベントが催されている。
売店・把委駆、ムーンライト隼など関連施設
開店日は少なく、例年、冬季休業となるようなので、以下の関連サイトでご確認を
関連サイト
隼駅を守る会 公式Facebookページ
各種日程や営業時間をこまめに情報を発信しているのはココかと…。なおブログは閉鎖された模様。